市場理論

正規分布とランダムウォークの矛盾とは?

金融市場では、正規分布やランダムウォーク理論が価格変動を予測する手法としてよく使われますが、これらの理論には限界があり、市場の現実とは大きく異なります。本記事では、その理論的な矛盾を掘り下げ、トレード戦略への影響と適応策を検討します。

本記事の内容
  • 正規分布とランダムウォーク理論の基礎
  • 市場がこれらの理論とどのように異なるのか
  • トレーディング戦略への影響とその解決策

正規分布の限界と現実の市場

市場で用いられる正規分布理論には限界があります。この章では、正規分布が市場の動きをどのように捉えているかを確認し、その理論が現実の市場でどのように異なるのかを掘り下げていきます。

正規分布とは?その基本概念を理解する

正規分布は、統計的に「ベルカーブ」とも呼ばれる、データが平均値を中心に左右対称に分布する形を指します。自然界や社会的なデータでも多く見られる形であり、これに従うと大部分の値が平均に近く、極端に小さいか大きい値はごく少ないとされています。

金融市場においても、価格の変動がこの正規分布に従うと仮定することで、リスクや価格予測が行われます。多くのリスク管理モデルや価格予測手法が正規分布に基づいており、平均から大きく外れる変動は稀であるとされます。しかし、実際にはこの仮定が崩れる場面が多く、市場での価格の動きは正規分布には従わない現象が頻繁に発生します。

市場に頻発する大きな変動(ファットテール)の現実

実際の市場では、正規分布の枠を超えた極端な価格変動、いわゆる「ファットテール」が頻発します。ファットテールとは、分布の端の部分が厚くなる現象で、通常の正規分布では予測できないほど大きな動きが生じることを意味します。

例えば、リーマンショックやコロナショックのような金融市場の崩壊は、正規分布ではほぼゼロに近い確率の出来事とされますが、実際にはこれらの「予測不可能な」大変動が市場に深刻な影響を与えることがわかります。このようなファットテールの存在を認識し、市場がしばしば正規分布を超えて急変することを考慮する必要があります。市場ではこのような異常値が無視できないほど頻繁に現れるため、リスク管理は正規分布だけで済まされないのです。

価格の平均回帰(とがった山頂)とレンジ相場

もう一つの市場の特徴として、価格が平均値に戻ろうとする平均回帰が見られます。これは、価格が短期的に変動しても、長期的には特定の平均値に近づく傾向を示す現象で、正規分布の鋭い山頂(ピーク)にも関連しています。

平均回帰の強い市場では、価格がレンジ内で停滞することが多く、トレンドが継続しづらい傾向があります。トレンドフォロー戦略では、ブレイクアウトを狙うことが一般的ですが、このような平均回帰が強い市場ではだましのブレイクアウトが頻発し、トレーダーはレンジ相場に巻き込まれやすくなります。価格のレンジ相場とトレンドの両方を理解し、適切なトレード戦略を取ることが重要です。

ランダムウォーク理論の限界とトレンドの存在

ランダムウォーク理論は価格が無作為で予測不可能であることを前提にしています。しかし、実際には市場にトレンドが存在することが多く、理論とは異なる現実が見られます。この章では、トレンドの存在理由とランダムウォークの仮定の矛盾について説明します。

ランダムウォーク理論とは?価格の無作為性の前提

ランダムウォーク理論は、市場の価格変動が無作為に動き、過去の動きが未来に影響を与えないという仮定に基づいています。この理論に従えば、価格の動きに一貫した方向性はなく、短期的な変動は完全に予測不可能とされています。そのため、過去のデータを分析しても、未来の価格予測に意味がないとされます。

しかし、実際の市場では、経済ニュースや投資家の行動に影響を受けて、価格が一方向に動くトレンドが現れることが少なくありません。これはランダムウォークの仮定とは矛盾しており、実際には過去の価格データが一定の予測力を持つことがあるのです。

市場のトレンドはなぜ発生するのか?

市場にトレンドが存在する理由の一つは、投資家が市場の出来事やニュースに敏感に反応することです。たとえば、経済指標が好調であれば、多くの投資家が市場に資金を投入し、価格が上昇する傾向が生まれます。また、投資家は過去の価格変動から市場の方向性を判断する傾向もあります。これにより、トレンドが形成され、価格が一方向に動く現象が起こるのです。

さらに、多くのトレーダーが市場に対して「肌感覚」を持ち、直感的にトレンドを捉えることで、それに基づいたトレードが市場全体の動きに影響を与え、トレンドが強化されることもあります。

投資家心理が生む市場の規則性

市場においては、投資家の心理が価格の動きを大きく左右します。具体的には、次のような心理的な偏りが、トレンド形成に影響を与えます

  • 過去の価格に囚われる傾向(アンカリングバイアス)
  • 投資家は過去の高値や安値を基準に考え、現在の価格が割安か割高かを判断することが多くあります。これにより、価格が上昇している局面で「まだ買い時だ」と感じ、さらに買いが進むことがあります。

  • 自分の信じたい情報に偏る(確証バイアス)
  • 市場の上昇局面では、ポジティブな情報ばかりを信じてしまい、買いを増やす傾向があります。この結果、トレンドが長期化し、価格が一方向に動き続けることになります。

  • 周囲に追随する行動(群衆行動バイアス)
  • 他の投資家が買い始めると、遅れまいとして同じ方向に動く行動が生まれ、価格が上昇するトレンドを強化します。これによりバブルが形成され、その後の大幅な下落にもつながることがあります。

    こうした投資家心理や偏りが、市場におけるトレンドを形成する大きな要因の一つであり、トレーダーはこれらの心理的な影響を理解することで、トレンドフォロー戦略の効果をより発揮させることができます。

    トレーディング戦略の影響と対応策

    市場のファットテールや平均回帰、投資家心理が市場にどのような影響を与えるかを踏まえ、トレーディング戦略には特別な対応策が必要です。この章では、トレンドフォロー戦略の活用法や、資金管理、損切りによるリスク軽減の方法について説明します。

    トレンドフォロー戦略を活かすための対策

    市場にトレンドが発生する際、トレンドフォロー戦略は有効な手法です。この戦略は、価格が一方向に動き始めた時にその流れに乗り、トレンドが続く限りポジションを保有し続けることで利益を伸ばします。トレンドフォロー戦略を効果的に活用するには、トレンドの方向を的確に捉え、トレンドが終わるタイミングでポジションを解消する方法が必要です。

    平均回帰への対策としての資金管理

    レンジ相場が続く場合や、価格が平均回帰しやすい市場では、資金管理がトレードの成否を左右します。頻繁に小さなリターンや損失が発生する場面では、資金を少額ずつ分散して取引を行い、リスクを抑えながら利益を追求することが重要です。レンジ相場に備えた資金管理の方法を確立することで、トレンドが発生するまで生き残りやすくなります。

    ファットテールへの備えとしての損切りルール

    市場におけるファットテールのリスクに備えるためには、損切りのルールをあらかじめ決めておくことが重要です。急激な下落に備えて、早めに損切りを行うことで、大きな損失を防ぐことができます。特に下落トレンドでは、損切りのタイミングを明確にすることで、資産の減少を最小限に抑え、トレンドフォロー戦略のリスクを軽減することが可能です。

    まとめ:優位性のあるトレンドトレードをしよう

    市場の価格変動は、正規分布やランダムウォーク理論だけでは捉えきれない側面が多くあります。市場にはトレンドとレンジが存在し、ファットテールや平均回帰などの特性がトレードに影響を与えます。トレンドフォロー戦略や資金管理、損切りを適切に活用することで、これらの影響を乗り越え、長期的な利益を目指すことが可能です。また、成長株投資も有効な手段であり、明確な売買ルールの下でリスクを管理することが成功への第一歩です。

    本書は好況時にも不況時にも使える理にかなったトレード戦略の構築法を紹介している。多くの人がトレンドに沿ったトレードで失敗しているが、本書の指示に従えば、それを避けることは確実だ。

    本書ですが、私はKindle Scribeで読みました。
    図表はそこまで多くないので電子書籍でも問題なく読めました。

    ABOUT ME
    たくすけ
    サラリーマンをしながらFIRE目指してます 投資のために学んだことをアウトプットしつつ自身の運用実績も公開していきます。 主な投資先は米国株、日本株、フィリピン株、暗号資産です。